納得 〜アセリノ・フレイタスと私と日本株撤退〜

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2000年代始めの人気ボクサーに、アセリノ・フレイタスというブラジル人王者がいた。

デビュー以来29連続KO勝利の記録を作ったハードパンチャーで、好戦的なファイトスタイルに私も魅了された。フレイタスは無敗のまま快進撃を続け、2004年にはこれまたボクシングファンには馴染み深い選手であろうディエゴ・コラレスとぶつかる事になる。

この試合でフレイタスは10回途中で試合を放棄しボクシング人生で初敗北を喫したのだが、その試合の諦め方が私はとても印象に残っている。ダウンを喰らった後に立ち上がるのだが、「いや、自分もういいっスわ」みたいな感じで手をプラプラと振り、あっさり試合を投げたのだ。当時WOWOWでこの白熱の乱打戦を観戦していた私は、その呆気ない幕切れに拍子抜けした。もちろんダメージが蓄積されていたので選手生命を考えた上での投了だったのだろうが、爆発的なパワーで敵を殴り倒してきた男の取る行動とは思えない程にサッパリとした味気ない最後だったように記憶している。

 

あれから十数年が経ち、私はあの日のフレイタスの気持ちをようやく理解した。彼は、納得したのだ。相手の強さを認め、もう挽回は無理だと納得し、試合を捨てた。納得出来たのだから、悔しがる必要もなく、怒りを抱える事もなく、フレイタスは「もういいっスわ」の境地に至ったのだ。

 

同じく、私も自分なりに納得し、日本株市場というリングを下りた。

 

昨年YouTubeにて株式投資による140万円の含み損の動画を上げたが、私なりに空売りなど様々なヘッジをかけて悪戦苦闘し、なんとか損失を減らしたものの、年明けから再び膨らみ始めた含み損を前にして『いや、自分もう90万円の損で納得するっス』と決意するに至った。決意をともなった納得は、時に残酷だ。しかし、納得いく損切りなのでさほど気にしてはいない。なにせ納得の上での選択なのだから! むしろ自分が納得して損切りしたのであれば、それは広義の意味において損ですらないだろう。納得いく損切りはむしろ得であり、利益であると断言できる。何故なら、私はこんなにも納得しているのだから。

 

損切りをして日本株投資から納得のいく撤退をした後は、納得のいく心穏やかな日々を送っている。これでもう、「納得しながら損をする事はないのだ」と納得して生きられる。納得のいく日々は尊い。含み損を抱えながら吸う空気と納得いく損切りをした後で吸う空気は、その味さえも違う事に気付いた。なんというか、損切りした後に吸い込む酸素は納得のいく味がするのだ! これも納得の効用というものだろう。納得できて、本当に良かった。

 

そのようなワケで、私は全てにおいて納得し、あの日のアセリノ・フレイタスのように相手を讃えてリングを下りたのだった。日本株式市場さん、あなたにはとても勝てません……。

 

しかし、幸いにも私は今後も成長が期待できる米国株や、オール・カントリーなどの全世界株式インデックスも保有している。これからはのんびりと積み立て投資をしつつ、世界経済の発展を願おう。だが、日経平均株価、お前だけは別だ。貴様だけは、決して上がってはならない。

 

私が損切りしてから株価が上昇する事など、許せる事ではない。そのような現実を肯定できるハズがない。いや、そもそも、今後日本株が成長する事などあってはならない!!

日本株というのは相場に仕掛けられた納得のいかない罠のようなものだ! 上げても絶対に下がるので納得する暇がないッ!! いいか、よく聞け日本株式市場および経済識者どもよ……一部の主力銘柄ばかり吊り上げおって……何が「2021年末には日経平均は3万2000円まで上昇するだろう」じゃ!? ワシが投資しとったゲーム銘柄はフルボッコじゃけぇのぉッ!!? 貴様らに味わわされた損切りだけは絶対に……絶対に……!

 

納得せんからなぁッ!!!!!

 

-了-