友人にホラを吹き込んだ結果

友人から「嘘つきやがったな!お前に聞いたことを上司に喋ったら恥かいたわ!」と怒りの電話。しかし人生をホラ話で固めている私には、どのホラのことなのか見当がつかない。それは言うならば身に覚えがないのと同じこと。その旨を友人に伝えると、ガッツ石松の件だよ!」とご立腹。

さて、これは困ったことになった。何故なら大のボクシングファンである私は、元世界チャンピオンのガッツ石松に関する嘘を200個ほど自作していたからだ。こうなると身に覚えがありすぎて、逆に分からない。

と、続けて友人が「あの国歌斉唱のやつ!」と言ったところでようやくピンときた。

 

彼についた嘘はこうだ。

 

「元ボクシング世界王者のガッツ石松は、初の世界タイトルマッチ時に大会運営側の手違いで君が代〟ではなくウガンダの国歌を流されてしまったことがある。しかしガッツ陣営に日本の国歌を知る者が一人もいなかった為、「日本国国歌斉唱です!」のアナウンス後に爆音で流れるウガンダ国歌に場内がザワつく中、ガッツは胸にグローブを当て真剣な面持ちで頭上にはためく日の丸を見つめ続けたという」。

 

………。

よく考えていただきたい。このレベルの嘘を信じて他人に話してしまうというのは、ガッツ石松に対して失礼ではあるまいか? これはもはや、嘘をつかれた側にそもそも問題があると言えるだろう。つまり我が友人の知性の問題なのである。

というワケで、憤る友人に対して私はこう答えた。

 

「全部お前が悪い」

 

-了-