青梅市が〝ほどいなか〟として紹介されているらしい事を知り、それはいくら何でも無理があるだろうと思った。ほどいなかとは、ほどよい田舎といった意味の言葉である。
青梅市はほどよくなく〝ほぼ田舎〟なのであり、これは地方移住ブームなどの流れに乗ってとりあえず田舎に住ませときゃいいだろという不動産会社のテキトーな言葉遊びによる戦略に過ぎない。
そこで私が真のほどいなかとして紹介したいのが、八王子市だ。
「いやお前もほどいなかという耳障りのいい言葉に便乗して、広告でひと稼ぎしようって魂胆だろ」という声が聴こえてくるが、まさにその通りである。
そんなワケで制作したのがこのポスターだ。
八王子で撮った写真をそのまま素材にしているのだから、さすがに今回は文句はないだろうと思いきや、広報課の担当者は改めて眺める八王子の現実の姿を前に、
「ほどよいってレベルじゃねぇ…」
と固まる始末。結果的に市政に関わる人間を現実に立ち返らせてしまった上、「ありのままの八王子は公開してはならない」とボツを喰らったのだ…!!
広告とは、ある意味で完璧な虚構を演出してみせること……。
私はデザイナーとして、そんな重要な点を見誤ってしまったのだ。
そう、我々は……
客の目を覚まさせては
いけないのである。