映画『GODZILLA』を観たのだが、これが極上の娯楽作品ではあったもののいくつか構成上の難も見受けられたため、自分の正直な感想を記そうと思う。
結末などネタバレを含む内容になっているので、これから『GODZILLA』をご覧になる方は早々にこのページを閉じ、念のため眼球をえぐり出して熱したフライパンで炒めてしまうことをオススメします。
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本作は主人公のフォード・ブロディ大尉とその妻……なんとかブロディ(名前を忘れたので以下ブロちゃんと表記する)の夫婦愛の物語がメインストーリーとして存在し、そこにおなじみゴジラがサブストーリーでちょいちょい顔を出すという構成になっているのだが、どうもゴジラパートが大仰過ぎるというかいわゆる「怪獣映画」のような作りになっているため、本筋のフォードとブロちゃんのヒューマンドラマがとってつけたみたいな印象になってしまっている。
これは正直、マズイと思った。
長期に渡る軍での任務を終えて帰宅した夫を迎えた際にブロちゃんが見せた嬉しそうな顔、あの笑顔を我々観客は2時間眺めていたかったのだ。子供を寝かしつけ、愛するダンナの面白トークをにっこにっこしながら聞いていたブロちゃん。やがて笑みが消え、静かに見つめ合う2人……むさぼるように唇を重ね合う2人……ここでブロちゃんが夫の首にキスをかましまくるのだが、これが最高にチャーミングだった。
俺は首筋へのキスが大好きなのだ。
映画開始から15分程度しか経っていないけれど、もうベッドシーンか……若干早い気もするが、その反面、「さっさとブロちゃんの裸を拝ませてくれッ!!!」という強い期待を胸に前のめりで銀幕を見つめていると、なんとここでブロちゃんのスマホが鳴り響く。「仕事かも…」なんて言いながら電話に出ちゃうブロちゃんの真面目さをアピールしたいシーンだったのだろうが、その後の展開が本当に余計だった。
『あんたのダンナのお父さんが、日本で捕まった』
ベッドシーンを焦らすために用意した展開とは言え、外国でダンナのパパ逮捕ってのはちょっと唐突過ぎはしないだろうか? ここら辺から映画は一気にシリアスムードへ。ベッドインをおあずけし、父に会うため日本へ向かうことになったフォードを見送るブロちゃん。このシーンの悲しそうなブロちゃんを俺はとても見ていられなかった……。が、もっと見ていられなかったのは映画の進行だ。
日本で父と再会し、ようやくブロちゃんの元へ帰れるかと思いきや、ああだこうだとトラブルに巻き込まれて驚くことにパパ死亡。おまけに日本で眠ってた巨大昆虫(?)が目を覚まし大暴れ。正直、ブロちゃんのことが頭から吹っ飛んでしまう超展開である。
で、まぁいろいろあって、ゴジラも眠りから目覚めるのだ。
ゴジラはご先祖様から受け継いだ本能だかなんだか知らんけど巨大昆虫ムートー氏の後を追い、喧嘩を仕掛ける。おそらくこれは監督の趣味なのだと思うが、今作はとにかくゴジラと昆虫の喧嘩シーンにかなり長い時間を割いており、冒頭でも書いたように中盤以降はほとんど「怪獣映画」といった様相を呈している。
フォーク大尉も狂ったように怪獣を追いかけ回し、これではブロちゃんの立場がない。サブストーリーがちょっと寄り道どころじゃなくメインストーリーを喰ってしまうというのはいかがなものか。挙げ句の果てには昆虫怪獣ムートーのメスが現れて、オスのムートーとのキスシーンまで見せられるハメに……!!!!
あのシーン、必要か?
観客が見たいのはブロちゃんとフォークのキスシーンだ。と言うか、おあずけになっているベッドシーンだ。観客を焦らすためにしても、いくらなんでも怪獣のキスシーンを見せつけられてエンディングで見られるであろうブロちゃんのキスへの期待感が増す奴なんていないハズ。今作の監督はどうも怪獣愛が強すぎるのではないかというキライがある。
しかしここがハリウッドの巧いところで、何だかんだ言って終盤のゴジラとムートーの決戦は見応え充分。これならもうちょいおあずけ食らってもいいかなとも思ってしまう、まるで怪獣映画のような大迫力の戦闘シーンを堪能できた。
で、まぁいろいろあって、ゴジラは勝った。
そしていよいよお待ちかね、ブロちゃんとフォーク大尉の再会シーンである。映画史に残るようなとてつもなく長い脱線を経て、ようやく本作はメインストーリーに軸を合わせる。2人の再会は、負傷者を多数収容する巨大スタジアムだ。家族が仲むつまじく暮らすマイホームから始まった物語は、巨大スタジアムで幕を閉じる……そう……つまり……
ベッドシーンを挟む余地がない…!!!
スタジアムの中心で夫と抱き合い涙するブロちゃんは、それはそれで可愛かった。だが、俺が映画冒頭から期待し続けていたのは、こんなものじゃない。ブロちゃんの裸はどうなった? セックスは? というか、ラストのブロちゃん夫婦よりもムートー夫婦のキスシーンのほうが長くないか?
ラストシーンでてくてく歩いて海にざぶんと入り、すいすい泳いで消えていくゴジラの背中がなんだかもの悲しげだったが、俺にはそんなゴジラの気持ちがよく分かる。
だって主要キャラの中であいつだけキスしてねぇもん。
そのようなワケで、『GODZILLA』は夫婦愛の映画だった。
もしも次回作があるのなら、監督には強くこう言いたい。
『メスのゴジラを用意してやれ』と……。
〜了〜