映画「ドラゴンボールZ 神と神」の感想

映画ドラゴンボールZ 神と神」を観た。子供の頃夢中になって観ていたドラゴンボールが、まさかこの身長(想像しやすいように書くと、一般的な大きさのマグカップを19〜20カップ積み上げた程度の高さである)になっても楽しめるだなんて。

ドラゴンボール最終回の時に田中君がジャンプを数冊買ってきて「ドラゴンボール終わったぞおぉぉーッ!」と悲鳴にも近い声で叫びながらクラスメートに配っていたのが懐かしい。あのときは「ネタバレすんなよ!!」と田中のアホを八つ裂きにして溶鉱炉に捨てたい気持ちでいっぱいになったものだ。


※以下、作品のネタバレを含んだ内容になりますので、映画を観る予定がある方もない方も、今すぐスケベ動画が見られるページに飛ぶことを強くお薦めします。


今作「神と神」は、従来のドラゴンボールの映画と比べてかなり異色な作品である。というのも悟空の声をアーノルド・シュワルツェネッガーが不慣れなフランス語で当てているからではなく、ギャグパートの比重が大きく全編のほほんとした空気が満ち満ちているからだ。

今回のドラゴンボールはバトル漫画の様相こそ呈しているものの、どれだけ悟空たちがピンチに陥っても不幸の予感みたいなものはほとんど感じさせないつくりになっている。例えるならば、恋人の家に遊びに行ったら彼女が知らない男と裸で寝ていたけれど、なんだか幸せそうに寝てるしとりあえずコーヒーでも淹れて男の話を聞いてみるか。まあ、気に入らなかったら包丁握らせてもらいますわな。みたいな感じだ。違うかもしれない。

しかし、コーヒーを淹れたのに恋人は眠ったままだ。よほど激しいセックスだったのだろうか……俺は目を細めて男のカラダをつぶさに点検するが、さほど筋肉が発達した様子もなく、下半身のコアのほうも栄養の足りてないきゅうりといったところ。もちろん、パワーやコアの形状だけがセックスではない。こういう一見どうってことない男が、口にするのもおぞましいヘンタイ的な性行為で女の子を夢中にさせたりするものなのだ……。恋人が目覚めるのを待っていてもしょうがない。仕方なく俺は裸の男に服を着させ、2人でコーヒーを飲むことにした。


こうして自分の女を抱いたと思しき男とコーヒーを飲むというのも妙なものだ。お互い特に話すこともないし、かと言ってコーヒーを誘っておきながらトークのひとつもしないのでは悪い気もする。結局、「付き合ってどれくらいになるんだ? 結婚は考えているのか?」などと、聞かなくてもいいことを口走ってしまった。一体俺は何をしているんだという気になってくる。「まりちゃんとは、大学時代のサークルで知り合って……飲み会の後、家に呼ばれたのが始まりで……」と、男のほうも生真面目に答えてくるものだから聞かないわけにもいかない。それにしてもまり、思いっきり浮気してたんだな……。



気づけば窓の外も白み始めていた。俺は日付が変わったくらいの時間に彼女の部屋へ来たはずだから、もう5、6時間この男と話していることになる。意外と話が盛り上がり、飲み物もいつの間にかコーヒーからビールへと変わっていたが、こいつは俺の恋敵なのだ。

俺はローラのように頬を膨らませ、「お前、名前は?」と奴の顔を睨みつけながら聞いた。
「ケンです……」目を伏せながらケンは答える。ついさっきまで共通の趣味である鉱石拾いの話で盛り上がっていた男が見せるむき出しの敵意に、いささかおののいているように見える。その姿を見て俺は自信を深めた。俺は気の弱い奴には滅法強いのだ。

「いいか、ケン……これだけは言っておくぞ……。まりは、俺のカノ……」

言いかけたところで布団に横たわっていたまりが寝返りを打ってこちらを向く格好になったので、思わずケンと一緒に目をやる。まりは幸せそうに目を閉じたまま、「タカシ……むにゃむにゃ。。。」と吐息を漏らす。どうやら寝言らしい。


「タカシさん……というんですか? 名前……」ケンが俺の顔を覗き込む。


しばらくの間ケンと目を合わせた後、

俺は涙を拭おうともせずにこう答えた。



「雄介です」



それ以来、

俺はまりと一度も会っていない。


〜了〜