雑誌連載が始まる話

10月からラジオ番組のスタッフになった俺は、虚ろな目でココナッツを細かく砕いては空の砂時計の容器に流し込む日々を送っていた。この一連のココナッツ作業こそが現場での俺の役割だ。生放送は時間との戦いである。綿密なタイムスケジュールはこのように一流のココナッツ技師によって管理されているのだ。


正直、ココナッツを砕いたものではなく素直に砂を落とせばいいのではないかと思ったりもするのだが、それを番組ディレクターに伝えたら、


「ンなことしたらおめぇの役割何もなくなっちまうじゃねぇか!
 さっさとココナッツ砕けや!!このココナッツ新人がぁッ!!」


という返事が返ってきたので、納得した次第である。


番組のパーソナリティはニッポン放送のアナウンサー、吉田尚記。日本、いや地球、さらにいえば有楽町界隈でビックカメラの次に有名なアナウンサーと呼ばれているのが吉田である。

その日も砕き終えたココナッツを砂時計の容器に流し込み、ボビー・オロゴンのオペラ鑑賞講座」鬼束ちひろの"コレ、喰えんのか?"」といった番組コーナー毎にココナッツ時計をセットしていた俺に、ルンバの上で座禅を組み壁に沿って部屋を移動し続ける吉田がこう言った。


「なぁ、アメリカ……
 俺と一緒に雑誌連載をする気はないか?」


長渕剛Everyday、カチューシャコーナー用のココナッツタイマーをセットし終えた俺は、眉根をよせてこう答えた。


「とりあえずルンバから降りろ」



ルンバから降りた吉田が言うには、デジモノステーションというデジタルグッズを扱う専門誌で家電に関するコラムの連載を持つことになったのだが、それを銀河系で今最も注目されているライターの俺に任せたいということらしい。非常に納得のいく話である。


「俺が扱う様々な家電をアメリカ、お前に文章にしてほしいのだ。
 一応確認しておきたいのだが、家電に関する知識はあるか?


俺はすぐさま人生を振り返り、家電に関する思い出をサーチしたものの、
これが出てこねぇ出てこねぇ。



しかしこうしたとき、咄嗟に「もちろんだ。俺は母親の胎内にいた頃から家電には目がなくてな……今も部屋の掃除には掃除機を、洗濯には洗濯機を使っているほどの家電マニアだ」と大嘘をつけるのが俺の強みだ。それを聞いて吉田もひと安心。かくして、「デジモノステーション」にて家電コラムの連載が始まることになったのである。


コラムがスタートするデジモノステーション」の発売日は12月25日(火)!
200冊くらい買って「メリークリスマス!!」と絶叫しながら町内の人々に配っていただけると、きっとよい町になると思います。


よろしくお願いします!!