無職日記 4月3週

人間の目にはまったく同じに見えても、モンシロチョウ同士は雄と雌で全く違った見え方をしているらしい。無職もそれに近いものがある。無職同士で相対すると、互いのこじれたオーラのレベルを感じる瞬間があるのだ。

 

最近、平日昼間のジムでよく顔を合わせる豪雪地帯を普通タイヤで走る車みたいな顔したおじさんがいるので(あ、同族……)と確信し「いやぁ〜今年は2016年ですねぇ〜ッ!!!!……ところでお仕事は何を?」とそれとなく探りを入れたら「絵本作家をかれこれ25年やってます」とのこと。

判断を誤った……。そうだ。そうなのだ。

 

人間は、見かけによらねぇ。

 

【無職日記 4月第3週】

 

【4月10日(日)】居酒屋で「パーリラ!パリラ!!パーリラ!勝負下着もしまむらで!!」「パーリラ!パリラ!!パーリラ!理想は大きくエマ・ワトソン!!」とコールを続ける女性客らに店員が「いらっしゃいませ〜!ではまずお飲物のご注文をどうぞ!」と声をかけてて、まだ酒が入っていない事を知り心が震えた。

 

【4月11日(月)】スポーツに限らず、イメージトレーニングは集中力や自信を飛躍的に高める。例えば面接を想定する。面接官に志望動機を聞かれ、食い気味に「あなたの人柄に惹かれました」と答える。この食い気味のタイミングを繰返し想像するのだ。このトレーニングで、俺は面接を16回連続で落とされた。

 

【4月12日(火)】定食屋で隣の男女グループが「告っちゃいなよぉ〜ww」「そうだ告れ告れww」「時間は待ってくれないぞ!」と盛り上がってるのを耳にしながら無表情で味噌汁をすすっていたのだが、「でも相手、孫もいるしなぁ……」のひと言で一転応援したくなった。

 

【4月13日(水)】奮発してスーパーで刺身を買って帰宅後、ポストに突っ込まれていたチラシにより別のスーパーで本日限定の刺身セールが行なわれていた事を知り茫然自失。しかし落胆や後悔を引きずってはならない。それが一人前の無職になる第一の素質だからだ。怒りや悲しみを自制し、50回程クレームの電話を入れるにとどめた。

 

【4月14日(木)】電車の中でチャラ男の「はいクイズね!!日本人が最も多く食べてるバナナって……あ、違ッ……最も多く食べてる果物ってなぁ〜んだ!?」という問題に「……バナナ」と答える女の子、タイヤの付いてない自動車みたいな顔してた。

 

【4月15日(金)】飲み屋の隣の席から聴こえる「わたし結婚式は何度でもしたいって思ったなぁ〜♡ヒトミはもう2回もしてる上に今カレと3度目も狙えるんでしょう?最高じゃ〜ん♡」という会話に恐る恐る顔を向けたら、案の定ヒトミ、脱獄に失敗した麻薬王みたいな顔して固まってた。

 

今週の総括

決して落胆しないこと 。

それが無職としての第一の素質である。