日本最大のメガマッチ 村田諒太VSゲンナジー・ゴロフキン予想

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あのゴロフキンが日本で試合をする。

4月9日、いよいよ村田諒太VSゲンナジー・ゴロフキンWBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦が行われるのだ。これは鳥の胸肉のひしめき合いの中にアンガス牛が現れるようなもので、間違いなく日本へ乗り込んできたボクサーの中ではダントツのビッグネームであろう。日本のボクシングファンにとっては「え!? お前牛じゃん?!」と驚いてしまうような、想像すら困難だったマッチメイクなのだ。まぁ、この例えは間違っているような気もするが……。

 

全盛期は過ぎたとみなされるゴロフキンの年齢、また〝カネロ〟アルバレス戦での手痛い初黒星を考慮してもなお、ボクシングファンとしては日本もついにこうしたメガマッチが組めるところまで来たのかと感慨深い一戦だ(ファイトマネーの高さからフジテレビが放映権を諦めたのは残念だが……やはり牛肉は高い!)。しかし、正直に言えば私は村田にほぼ全くと言っていいほど期待していない。〝衰えた〟と最近のゴロフキンはよく指摘されるし、ある程度事実だとも思うが、それでも直近の試合を見る限り村田の手に負えるような相手ではないのではないか? 

 

この試合の展開予想は、ズバリ〝静と動〟である(村田の試合はどれもそんな感じではあるが)。いつも通りのブロッキング主体の静の村田に対し、これまたいつも通り強烈なプレッシャーをかけつつ打ちまくる動のゴロフキンという図式だ。ジュラ紀の時代から幾万回と陽と雨に晒されてきた物言わぬ岩と発情期を迎えて求愛ダンスを踊り狂う鳥の対決と言えば、分かりやすいだろう。

 

私は村田というと未だにロブ・ブラントとの第一戦の印象が強い。打ち終わりに対するブラントの手数の多さに対応しきれず、ズルズルとペースを握られ敗北した村田の姿だ。村田の攻撃が終わると同時にこれでもかとちょこちょこしつこくパンチを撃ってくる。例えるならば、ブラントという選手は定時を迎えて「よっしゃ俺のターン! 家に帰ってスケべな動画見よ♪」とほくそ笑んでいるところに「これ追加で頼む」と大量の書類をデスクの上に放る、嫌な上司みたいな選手なのだ。仕事、仕事、仕事、刹那的俺のターン、仕事、仕事、仕事、仕事、仕事ではさすがの村田もウンザリする。そのようなワケで、ブロッキングは世界的に見てもかなり高度なレベルにある村田だが、打ち終わりに手数で合わせられると意外と被弾も多いことが分かった一戦だった。

ゴロフキンはそんなブラントよりも遥かに攻撃力が高く、当て勘に優れ、回転力があり、ディフェンス力も備えている。そして何よりプレスのかけ方が尋常じゃない。いわば仕事、仕事、仕事、仕事、仕事、仕事、仕事、仕事、仕事というようなスタイルである。休憩も帰宅も許さないような男に一体どうやって勝てと?

 

勝機があるとするならば、ブラントとのリベンジマッチで見せたような〝先に当てたモン勝ち〟戦法だろう。ロンドン五輪でアトエフやファルカオといったフィジカルモンスターにボディを効かせていたように、そして鬼上司ブラントを2Rで仕留めたように、村田のパワーは本物だ。ゴロフキンとの再戦の際にカネロが活路を見いだしていたボディショット、あれを村田が挟み込めれば面白くなるかもしれない。とはいえゴロフキンにボディブローを決めるというのは、飛んでいる蚊の額の中心を爪楊枝で突くくらい難しいことだとは思うが……。

 

ちなみにゴロフキンの側から見れば、村田戦は頑丈なサンドバッグを相手にするようなものでハードな仕事ではないだろうと思う。先述の通り私はこの試合はゴロフキンの勝利予想ではあるが、それでもミドル級で金メダルという極上の夢を見せ、プロの世界の頂まで到達した村田は我々ボクシングファンの誇りである。万が一、村田がゴロフキンを沈めるようなことがあれば、私はもう涙で全身の水分を失い干からびて、体毛は抜け落ち皮膚はただれ、くぼみから落ちそうになる眼球を押し戻す力すらないものの、村田勝利の興奮から肉棒だけは猛々しく天へと反り上がっているという状態になるだろう。要するに、現在の自分より幾分マシな人間になれる気がするのである。

 

-了-