水曜日のアベノマスク

キャビネットの整理をしていたら、未開封のアベノマスクが出てきた。

こんな所に収納していたのかと、その存在さえ忘れていた当時の政権の切り札アベノマスク。これで喜ばなきゃ国民は一体何で満足するのだと、父を超える三度目の離婚を達成したいしだ壱成のような自信を持って配られたこのマスク。

 

使わずに捨てるのもなぁ……と何となく装着してみたら、私の顔がデカ過ぎるのか鼻と口を覆える位置にマスクを調整すると、どうしてもアゴが出てしまう。私はどうもこれが気にかかった。何かと〝大きさ〟を気にする男という生命体としてマスクをつける以上、これは致命的な気がした。

 

しかしマスクは二枚いただいている。そうか! 顔がデカイ人の為に、もう一枚はビッグサイズなのだな!? 開封し、装着したら、見事にアゴが出た。ひょっとしたら、政府の不手際で私だけ同じサイズのマスクが配られてしまったのではないか? 

 

同じような境遇の人がいやしないかとツイッターで検索してみたものの、どうやら2021年12月現在、アベノマスクを装着し不平をこぼしているのは日本で私一人だけらしい事がそれとなく分かった。

 

じゃ、いらねーや。

 

と、アベノマスクをゴミ箱へ放り込んだ。

そんな有意義な水曜の晩である。

 

-了-