これがいわゆる情報弱者というものなのだろうか。
忘年会の会場探しで目を付けた『しゃぶしゃぶ温野菜』という店のホームページを眺め、小学生以下は食べ放題が無料だと知り驚いた。
もしも時間が巻き戻せたら、などという絵空事を言うつもりは毛頭ない。しかし、もしも時間が巻き戻せたら、俺は3歳くらいに戻って毎日この『しゃぶしゃぶ温野菜』なる店に通い、食費を浮かせたことだろう。
いわば小学生以下の日本人にしゃぶしゃぶ無料券を配っているようなものだが、こうした事実を知らぬまま小学校に上がってしまった俺のような人間は、人生において大きなしゃぶり損をしていることになる。俺がおしゃぶりをして気を紛らわせていたあの頃、同級生の上條君はアンデス高原豚をしゃぶっていた可能性だってゼロではないのだ。そう考えると、とても悔しい……。俺たちはしゃぶり格差のある社会で生きているのだ。
もしもこの駄文を読むあなたが3歳ならば、今すぐ『しゃぶしゃぶ温野菜』へ行けと私は強く言いたい。2歳のキミにも、4歳の貴殿にだってチャンスはあるのだ。どうか私のようには……30も半ばを過ぎてから『もしも時間が巻き戻せたら……!!』などと人生を激しく後悔する人間にはなってほしくないのだ。
ただし、ひとつ考慮すべき問題があった。
俺が自由気ままにおねしょアートを描いていた昭和の時代、
『しゃぶしゃぶ温野菜』ってあったのか?
-了-