南海キャンディーズの山里亮太と女優の蒼井優の結婚という、コンビニに操縦を誤ったジャンボジェット機が突っ込んでくるようなサプライズは、我々独モ(独身モンスターズ)のド肝を抜いた。
先日の独モの飲み会でも、
「まさか山里が蒼…」
「言うな」
「……。」
「……メッチャ可愛かったな……」
「言うな」
「「「……。」」」
と、この話題で持ちきりであった。
対サノス戦で1400万605通りもの未来を見た上で唯一の勝ち筋を見出したドクター・ストレンジでさえ、このような勝ちパターンは予測できなかったであろう。6月5日、日本中の男達は山里 亮太というサノスに対しある種の敗北を喫したのだ。
「なぁ……俺達が目を逸らし続けてきた結婚て……メチャクチャ素晴らしくて、あったけぇモノなんじゃないか……?」と、心の弱い俺が耐え切れずに漏らすと、さっきまで鋭い調子で場を律してきた友人の田崎君も「言うな……」と弱々しく口にしながらおしぼりで目頭を押さえ始める始末。
まるで全宇宙の人口の半分が塵になってしまったかのような重苦しい雰囲気の中、「カラテカイリエ」と誰かがつぶやいた。
「カラテカイリエ」。
「カラテカ入江」。その言葉の響きは甘美で力強く、山里蒼井の結婚会見からは月と地球ほどもの距離があり、驚くほど俺達独モと親和性があった。
そうだ。俺達にはまだ……語るべきことが、幸せから目を背けられるだけの話題がある。
ほどなくして、インフィニティ・ストーンを6つ全部集めたかのような活気に溢れた表情で田崎君が言った。
「闇営業の話をしよう」
〜Fin〜