禅話4 〜 一期一会 〜

寺では日本全国各地から禅を学ぼうと集まった、下は中学生から上は50代までの20余名の仲間たちと過ごした。実体験を以て禅の精神を学べたことは大きな糧となったが、それ以上に自分の心に残ったのは、彼らとの交流であった。

 

私語一切禁止の坐禅や薬石(食事)における沈黙の共有。その非日常感は私にとって初めてTENGAを使用したあの日と同じように刺激的なものであり、また雑談が許される休憩時間に彼らが話してくれた身の上話は、アパート暮らしで隣の部屋から漏れ聴こえてくる喘ぎ声よりも興味深いものだった。

 

とても全ては書き切れないが、印象に残った参加者を以下に抜粋する。

 

東日本大震災で家も車も友人も失い、鬱に。現在もその後遺症に悩まされ、自分と向き合うために参加したという男性。

・20年に渡る男子3人の子育てを終えた後、ふと自分の人生は何なのだろう、この先何ができるのだろうと思い参加を決意したという女性。

・自営業も軌道に乗りうまくいっていたのに、ある日突然そのすべてをやめたくなり無気力状態に陥ったと話す男性。

・家族問題を抱え、このままではいけないと自分を律するために寺へやって来た女性。

・少年院を出た後、両親から強制的に寺へ入れられた男の子。

・恋愛で心に深い傷を負った女の子。彼女は禅に魅了され、和尚にはからってもらい比叡山へ渡る予定だという。

 

その他にも多くの悩みや問題を抱えた人々が真剣に自分の人生と向き合う為に寺へ集まっており、彼らのトーンに合わせて告白した「最近靴の中で靴下がよく脱げて……」という俺の悩みがとてもチンケなモノに思えて恥ずかしかった。

 

まぁ、実際チンケなのだが。

 

180まで生きると想定した場合、長い人生のたった数日間を共にしただけの人々ではあるが、こうも他人の心の闇に下りていく経験はそうそうなく、とても貴重な体験となった。

 

また参加者の中には高校生ボクサーやデザイナー志望の学生もおり、不思議な縁の巡り合わせを感じた(そう。よく浮浪者と間違われるが、俺はデザイン業を営むボクサーなのだ)。何人かの参加者とはLINEで現在も交流があり、自分の人生に意義のある味付けができた禅修行になったと思う。懸命に生きるすべての人生に、合掌。

 

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ー了ー