禅話3 〜京都へ禅の修行へ〜

早朝5時20分、鈴の音で私は起床した。

 

目覚めた時一瞬そこがどこか分からなかったのは、いつもモーニングには滝を登る鯉のように勇ましくバルクアップしていた私の股間が、真夏のアスファルトで炙られたミミズのように力無くしぼんでいたからだけではない。「開静(かいじょう)〜」という起床の号令をかけながら、鈴を持った雲水(修行僧)が小走りに室内を駆け抜けるという状況下に置かれていたからだ。

 

剣豪達が到達した境地〝無心〟とは何か……。その秘密を求め、私は京都で禅体験を催している寺へ泊まり込みの修行へ来ていたのだった。

 

 

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修行先は京都の宝泉寺



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修行者が坐禅を組む禅堂

 

 

布団をたたみ20分間の太極拳で体と頭を起こした後は、禅堂にて1時間の坐禅に入る。和尚から教わった坐禅の組み方を忠実に守り、20数名の参加者と共有する無言の時間は不思議なほどに清々しく、さすがの私も脳内からオパイやオシーリといったピンクな雑念が薄らいでいった……ただし、目さえ開けなければ。

 

目を開けそっと堂内に目をやると、右斜め前方に艶かしい人妻の姿が映りこむ。その透けるような白い肌。華奢な肩。入山初日に少し話をして以来、私は彼女の虜となっていたのだ。糸で吊られたようにピンと伸びた背筋、夏の小川を思わせる穏やかでしんとしたそのたたずまいを見て、私は確信した。

 

彼女こそ仏だ……!

 

修行開始2日目にして仏と出会った私は早々に下山し肉と魚を食いまくろうかとも思ったが(寺ではお粥と野菜しか口にできない)、宮本武蔵が長期に渡る坐禅の末に人妻の白い肌を見い出し無心を悟ったとも思えない。私はまだしばらく修行を続けることを誓い、すっかり形成されていた人妻の裸体を脳内から追い出すため、坐禅を続行するのであった。

 

ー続くー