無職日記 5月3週

ドラクエ』などのRPGではキャラクターの体力をHPと表現するが、無職にとってのHPは貯金残高である。預金通帳に並ぶささやかな数字の列が0になれば『無職クエスト』はゲームオーバー。

このゲームには時間経過と共にHPがじわじわ減っていく過酷なシステムが採用されているが、これをやりごたえがあると捉えるか、理不尽と捉えるかはプレイヤー次第だ。俺はゲーマー心をくすぐられプレイし続けてきたが、徐々にこう思い始めてもいる……。

 

これ、クソゲーじゃね?

 

【無職日記 5月第3週】

 

【5月16日(月)】ヨドバシで「還暦を迎え、もう1度腰を据えて過去に挫折したパソコン通信に挑戦しようと思いまして。テレホーダイの契約はどちらで出来ますか?」と聞くおじさんに店員の兄ちゃんが「テレホーダイ?? ですね??? 確認してきます!」と対応し売り場を駆けていった。夢の続きが今、始まろうとしている。

 

【5月17日(火)】江戸時代に生まれた生活習慣を『江戸しぐさ』と呼ぶらしい。こうした日常生活の作法は江戸の町民だけでなく無職にもある。平日昼間の外出で身を低くし移動する「ご近所避け」、布団を干す際に隣の奥さんとの鉢合わせを避ける「ベランダエスケープ」。これら全て『無職しぐさ』である。

 

【5月18日(水)】隣の席で男女が「ねぇねぇ、今すぐ自由にどこか行けるとしたらどこ行きたい?」「イギリスかなぁ」とたわいもない話をしていたのだが、「超フツーw」「確認してぇんだよ。家族を捨てて借金背負ってわざわざ海外で始めた、親父の寿司屋をさ……」と予想外の展開になり、とんこつラーメンに全く集中できなかった。

 

【5月19日(木)】無職と言うと笑われる事がある。俺が過大なリスクを負い無職生活を続けている様に見えるのだろう。しかしリスクのない挑戦を挑戦と呼べるだろうか?挑戦する人を笑う奴は、挑戦した事のない人間だ。無職を笑うのは、無職じゃない人間だ。正直、1秒でも早く指差して笑う側に回りたい。

 

【5月20日(金)】コンビニでギャル達の「ねーテツオのこと覚えてる?」「あぁ〜、ファミレスの厨房で半ケツ出して米研いでる写真ツイッターにアップした奴でしょ?」「あいつさぁ、消防士になったらしいよー」「マジで!? 炎上気にしてたんだぁ〜!」という会話に気を取られ、卵を買うの忘れた。

 

【5月21日(土)】歌舞伎町を歩いてたら、呼び込みの金髪チャラ男が「股間にサオリンをぶら下げてる皆さぁーーん!! 全・員・集・合オオォォーッ! 当店『おっぱいキャバレー』では、3回までボールに触れるルールを今夜だけ5回に増量!! 揉んでくださぁーーい!!!」と叫んでて、リオ五輪出場決定の喜びに浸る暇がなかった。

 

今週の総括

素晴らしい揉み心地でございました。