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宇宙のランデヴー

ノスタルジー 雑記雑文

ようやく正月気分が抜けてきたと思ったら、なんともう忘年会シーズンである。


いつものメンバーで集まる事もあれば、この時期にしか会わない顔もあり、現状報告に昔話、ついつい酒が進んでしまう。しかし、誰と飲んでいても大抵はいつものあの話題に落ち着くことがほとんどだ。そう……



宇宙人いるいない論争である。



『宇宙人いない派』の俺は「宇宙人? いるんじゃないかな……俺たちのここにね」と笑みを浮かべながら頭をトントンと指で叩く仕草で『いる派』の連中を挑発するのが恒例なのだが、なんと今年は「カッパを見た」と話す者が現れたので驚いた。


発見者によると、カッパは多摩川の河川敷で缶ビールを頭の皿にかけながら、ぼんやり遠くを見つめていたらしい。すぐさま宇宙人いない派から「証拠を見せろ」「妄想乙」「カッパって宇宙人なのか?」といった声が挙がったが、「写真に撮った」と不敵に笑うカッパ発見者が見せつけるスマホの画面に、俺たちは戦慄した。


そこには、多摩川の河川敷に転がるアサヒスーパードライが映っていたのである!!!!


「本当に多摩川だ……」「カッパが飲んだビールだ……」「カッパって宇宙人なのか?」カッパが飲んだ缶ビールという確固たる証拠を見せられては、宇宙人いない派の俺たちも切り返しようがない。


だが、俺の頭の隅には何か引っかかるものがあった。


(どう見ても多摩川だよな……)
(缶ビールも合成なんかじゃないぞ、これ……)
(ていうかさ、カッパって宇宙人じゃなくね?)


焼酎をイッキに呷り沈思黙考する俺の耳に、仲間たちの動揺の声が響く……。
何だ? 一体何が引っかかる?!


……?


(((ていうかさ、カッパって宇宙人じゃなくね?)))


「カッパは宇宙人じゃねぇッ!!!」気づくと俺はそう叫んでいた。思わず、隣の席の田崎君が「それは俺がさっきから言ってるけど……」と動揺しながら俺を見る。


俺の発言がきっかけとなり、宇宙人いない派は形勢逆転。「「「パーリラ!!パリラ!!パーリラ!!パリラ!!カッパは宇宙にゃいやしないッ!!!」と酒を呷って大合唱。


が、宇宙人いる派のカッパ発見者は動じる事なくこう言い放った。


「カッパがいるなら宇宙人がいてもおかしくねぇだろ」


「なっ……!?」顔を見合わせ、再びざわつく俺たち。


「カッパがいるなら……」
「宇宙人がいても……」
「おかしくない……?!」



「「「た、確かにッ……!!」」」



だいぶ酔いが回り目が据わった田崎も、これには力なく頷くしかなかった。「その通りだ……カッパがいて宇宙人がいないだなんて、そんなの誰にも決められねぇや……」


カッパは存在する。すなわち、宇宙人も存在する。ましてやそんなの誰にも決められねぇ……。


考えれば考えるほど、その通りだ。


「いるよ、宇宙人」気づくと俺は震える手でカッパ発見者に手を差し出していた。「ぶっちゃけ、カッパ自体は写真に収めること出来なかったけどな」どこか気恥ずかしげではあるものの、カッパ発見者はそう言いながら俺の手を握った。


パチ……パチ……音のほうに目をやると、田崎が涙を流しながら拍手をしていた。やがて、宇宙人いる派・いない派両陣営からも拍手が沸き起こった。


その瞬間、最高にくだらないことが俺の身に起きた。


俺は、泣き出していた。


涙を流しながら、カッパ発見者を強く強く、抱きしめていた。


店の柱に取り付けられた時計が朝の5時を示していた。


新しい1日の、始まりだった。



〜Fin〜