普段友人とする会話というと日経平均株価や国際情勢、特殊な自慰行為によって痛めた首と腰の話などに終始してしまうため、『頭痛』について意見交換をすることがない。
しかし、先日たまたま片頭痛に悩んでいるという人と話をする機会があり、そういえばと俺も「頭痛はあの爆発音とか人の声が嫌ですよね」と話を振ったら、落とし穴に落ちたプテラノドンみたいな表情の上に「???」とハテナマークを浮かべられ、思わず動揺してしまった。
聞くと、彼は頭痛の際に爆発音や人の声など聴こえないという。「じゃあ頭痛のときに見る、あの強烈な光の渦は?」と尋ねると、これにもやはり釣り堀に落下したプテラノドンのようなフェイスをキメられてしまった。
そこで何だか俺は不安になった。
これまで他人と頭痛について喋ったことがないワケではないが、振り返っても「爆音」だとか「光」といったワードを相手の口から聞いたことはない気がする……。
そもそも俺の経験する頭痛は決まって夜眠りにつく前に起きる。というか、横になっているとき以外で頭痛になったことはないように思う。
俺のいう頭痛とはこういったものだ。
枕に頭を乗せ、その日見たスケベな動画を脳内再生させながら「俺だったらあんな野暮なアングルでは撮らんな……真に女の体にエロスが宿る部分は何処だ? それは背中だ……まずは男優に徹底的に背中を攻めさせ、その流れで耳を…」と独自のAVシミュレーション行なっていると、突然『ズドオオオォォォンッ』と頭の中に爆音が轟き、続いて赤やら黄やら紫やらの光の線が絡まり合い、目の前で渦を巻き始めるのだ。このとき、体は金縛りになっていることが多い。
光がバチバチグニャグニャと炸裂を繰り返している間も頭の中で爆発音は鳴り響いているのだが、「痛い」という感覚はほとんどなく(そもそも『頭痛』ではないような気もしてきた…)、全身に血液ではなく電流が走っているような「何か…何か体がスゴイことになってる!!!?」という驚きのほうがよっぽど強い。実際ビリビリとした感覚も味わえるので、なかなかスリリングだ。金縛り状態じゃなければすぐさま手足をバタつかせるなり、股間を怒張させるなりして抵抗を試みるだろう。
爆発音といっても文字ではどうにも伝わりにくいので例を挙げると、カラオケ店のすべての部屋のドアを開けっ放しにして最大ボリュームで各部屋一斉にB'zの『ultra soul』を流し、サビ最後の「\ハイッッ!!!/」に合わせてカラオケ店にジャンボジェット機が落ちた音、と言ったほうがよいかもしれない。それもジャンボジェット12機が同時にだ。
そしてそんな爆音の合間を縫うようにして、ときおり人の声も響いてくる。大抵の場合、友人や芸能人、本能寺で体を焼かれて絶叫する織田信長など、どこかで耳にしたことのある声なのだけれど、たまに『バイオハザード』に出てくるゾンビが甘太郎あたりの居酒屋で泥酔しちゃって苦しみながら何か変な色した液体を便器に吐き散らすときに漏れちゃう声みたいなのも聴こえてきて、爆発音で騒々しい上にかなり不気味なのだ。
と、これが俺の言うところの頭痛なのだが、こうして書いてみるとやっぱりちょっと様子がおかしいのではないかとは思う。始めに書いた偏頭痛持ちの人は長時間ゆるゆると痛みが続くと話していたが、俺の場合は長くて3分といったところだ。おそらく頭痛のタイプが違うのだろう。
そこで俺は周りにもこうしたタイプの頭痛を経験している人がいないか、検証してみることにした。方法は簡単だ。アドレス帳に入ってる人間全員に向けて「焼死体になる直前の信長の声を聴いたことあるか?」とメールすればよいのだ。すると驚くべきことに、「ない」という返答が2件、それ以外は全員返信なしという結果が得られたのだ…!これはつまり、この頭痛が特殊なものであることを示しているに他ならない。
恐ろしいことにようやく本題に入るのだが、そんなワケで俺はネットでこの頭痛について調べることにしたのであった。すると答えは驚くほどあっさり見つかった。
この頭痛は『頭内爆発音症候群(http://allabout.co.jp/gm/gc/377306/)』と呼ばれ、原因などはまだよく分かっていないらしい。
なにせ医学的にも解明されていないことなので、これ以上もう特別書けることもない。
いつものクセで長々と書いてきたが、正直、
こんな頭痛が時々起こるんです。
調べたら『頭内爆発音症候群』というらしいです。
・・・と、2行で終わらせてもよかった気がする。
〜了〜