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6月18日雑記雑文 「消しゴムについて」

職を利用したプロポーズ
・タクシーの中で彼にプロポーズされて「はい」と答え、「おめでとう。さぁ、うちへいらっしゃい。母さんもきっと喜ぶ」と笑顔でこちらを振り向いた運転手が彼の父親だったりしちゃうタイプの親ぐるみの面倒なサプライズ求婚、地球が出来てから今日までの歴史の中でひとりくらいはやってそう。


パンティゴルフクラブサッカー・ボクシング
・ボクシングジムで汗を流していると、ときおり通行人が足を止めて窓越しに僕らを眺めたりする。ひょっとしたら、彼らには僕らがそれなりにいっぱしのボクサーとして映っているかもしれない。第三者に見られながらスパーリングなりシャドーなりミット打ちをするというのは、「カッコ悪いところは見せられない」なんて適度な緊張感も生まれたりして、なんというか身が引き締まる気がして良い。

いつもは近所のアパートからくすねてきたパンティを頭に被ってゴルフクラブをブン回しながらサッカーのドリブルの練習に明け暮れている僕でさえ、そのときばかりはゴルフのこともサッカーのことも放り出して、頭にパンティを装着したままサンドバッグを一心不乱に叩きまくってしまうのだ。だが、サンドバッグを叩き終えて汗でぐしょぐしょになったパンティを頭から外す頃には通行人の姿はきれいサッパリ消えている。その代わり、近所に住む僕のお気に入りのチャーミングな女の子とポリスメンがジムの外から僕をしげしげと眺めていて、「あいつで間違いありませんか?」「間違いないです。あの人が下着泥棒です」なんて会話を繰り広げているのだ。

やはり第三者に見られながらボクシングの練習をするのは、緊張感があって良い。


夢の中の食事について
・ふと思ったのだが、夢の中で料理を食べても起きたときにはその味をすっかり忘れている。というより、そもそも夢の中では味を感じていないのかもしれない。味覚が仕事をしていないのかもしれない。はたしてこれは僕だけなのだろうか?

夢の中でもちゃんと料理の味は感じるよ、という人はいるのだろうか。昨晩見た夢では僕はお寺にいたのだけれど、そこで食べた「お寺てんぷら」という天ぷらのネーミングが印象に残っている。サクサク衣のおてらてんぷら。いつもの夢の中での食事通り、味はまるっきり覚えていない。


消しゴムについて
・今の若い人たちはご存じないかもしれないけれど、昔、地球には『消しゴム』というアイテムが存在していて。これが実に不思議な物体で…うーん、何て説明すればわかりやすいのだろう。あなたがノート(これも前時代の産物だ。知らない人は検索してみてね)に鉛筆(エンピツ…!今どきの若者は鉛筆なんて握ったこともないだろう。西暦2012年の現在では、ヒューマンドラマか何かで主人公が機転を利かせて上司の胸をひと突きするシーンでしか見かけないハズだ)で文字を書き込むとするじゃないですか。で、書き損じたりするじゃないですか。あなたなんてホント、いかにも文字を書き損じそうなチャーミングな顔してますよ。もちろんそれは恥ずかしいことなんかじゃないです、パーフェクトな人間なんてこの世には存在しないし、誓って言いますけどそんなあなたが愛嬌があって僕は好きです。そういった人生におけるささやかな失敗を、この消しゴムってやつは考えられる限り最もイージーな方法で帳消しにしてくれるワケです。

どうイージーか。あなたがノートに書いた文字を思うにまかせて消しゴム(想像ができない人は小さくて固い豆腐を思い浮かべてください)でこすりつければアラ不思議、文字が跡形もなく消えてしまうのです。こんな笑っちゃうほどプリミティブ(原始的)な方法で、あなたの犯した醜態はチャラです。帳消しです。これ、どう考えても黒魔術。ちょっと信じられないというか……少なくとも人生で初めて消しゴムを使ったときの衝撃以上の衝撃を、僕は味わったことがないですね。字が消えちゃうだなんて……後頭部をタラバガニの一番固い部分で殴られたくらいの驚きがありました。初め、カニで殴られたなんて思いもしませんでしたからね。ブロック肉かな?なんて見当違いの推理をしてました。


で、実を言うとここからが本題なんですが。


消しゴムを最後まで使い切ったこと、どれだけ思い返しても僕にはその経験がない気がするんですよ。なんかあいつらって使ってるうちに極端に小さくなっていくじゃないですか。最後の、いいとこまでは僕も使ってたんですよ。「うわ、こいつ寿命だ!」みたいなとこまでは。でも、その生涯を終えようとする消しゴムの使いにくさったら無いワケです。小さくなり過ぎて握れないんだもの。で、どうするかって言ったら、もうゴメンなんてつぶやいて背を向けるしか無いです。本当に辛いけれど。消しゴムのこと、最後まで大切にすることができなかった……結局のところ僕らは分かり合えない者同士なのかな…? でも、楽しくやっていた時期もあったじゃないか。二人で過ごしたあの日々の、すべてが間違っていたなんて僕は思いたくない。君がくれたかけがえのないメモリーも、君と耳をすませたあのメロディーも、いつしか思い出という深い森の中にしまわ……なんて考えてる間に消しゴムをくずかごに捨てちゃうワケですよ。

だから僕は消しゴムを最後まで使い切ってやったことが無くて。
あいつらって最後、どうなっちゃうんだろう。消えちゃうのかな?

僕ももう大人なんだし、これからは見限るようなことはしたくないなっていうか、消しゴムに対して誠実でありたいっていうか……そんなことを最近はずぅっと考え続けてますね。