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今、私が伝えたいこと

みなさんは「携帯電話」というアイテムをご存知だろうか?


かなり流行っているようなので、すでにお持ちの方もいらっしゃることだろう。


ピンと来ない方はまず「まな板」を想像してみてほしい。

あなたが今想像したそのまな板を、ノコギリで半分に割ってみよう。そう、気にすることはない、真っ二つに。

半分に割れたまな板を頭の中に思い浮かべることができたら、次にもう一度、そのまな板を半分に割ってみてほしい。
怖がることはない。思うままにノコギリの刃をまな板に入れるんだ。そう、その調子。


これで始めに用意したまな板はずいぶん小さくなったはずだが、想像することを恐れず、最後にもう一度だけ刃を入れてみてほしい。
うん、さらに半分に切断するんだ。躊躇することはない。誰も悲しんだりしないから……。


そうして出来た一片のまな板をそっと耳に当ててみてほしい。




それが、携帯電話だ。



この携帯電話なるものに、今、私は注目している。

考えてみてもらいたい。かつてここまで普及した道具があっただろうか?


私は傘以外には無かったと思う。


その傘だって雨の日以外は野球のバットの代用品ぐらいにしかならない。
はっきり言って、晴れた日の傘などプロ野球選手にしか役に立たないだろう。

しかし、携帯電話は雨の日でも使用することが可能なのだ……!!


思い返してみてもらいたい。

あなたは、携帯電話を目にしない日があるだろうか?

学校で、会社で、愛人の家で、意志を持った野菜たちによってつくられた秘密の王国で(ニンジンとかもう凄いことになってる、人類への憎悪が)、生活のあらゆるシーンで携帯電話を目にしているはずだ。かくいう私も携帯電話を外に持って出歩くほど愛用している。


そこで試しに私は自分の携帯に登録された友人の番号を10件ほど選んで電話をかけ、こう訊ねてみた。

「お前、携帯電話って持ってるか?」


すると驚くべきことに、全員が「当たり前だろ」とだけ言って苛立ちを隠しもせずに電話を切ったのである。
これは携帯電話が流行しているという事実に繋げて考えられる、確かな証拠だ。
嘘だと思うならあなたも今すぐ友人に電話をかけて、携帯電話を所持しているか確認してみると良いだろう。



ところで携帯電話の驚異的な普及は家電業界にも影響を及ぼしているらしく、先日私は電車の中で「電話の機能が付いたテレビ」を偶然目にしてしまったのだ!

さすがの私もこれには本当に腰を抜かしそうになった。
見た目は市販の携帯電話なのだが、液晶画面に表示されていたのはAC・公共広告機構のコマーシャルだったのである。

始めのうちは最近のテレビはこんなに小型化されているのかと感心していた私だが、テレビの持ち主はおもむろにテレビを耳に当て、なんと通話を始めたのである!!

「あなた、それティービーですよ(笑)」とツッコミを入れなくて本当に良かったと思う。あやうく赤っ恥をかくところであった。


電話機能付きテレビの登場により、家電業界は大きく変わっていくだろうというのが私の予想だ。

この流れで行けば近い将来電話機能付きの洗濯機や、電話も出来る掃除機などが出てくることは間違いないと思う。
実際、掃除機に電話機能が付いていれば掃除機をオフにする事なく通話が出来るわけで、大変便利だ。


携帯電話の登場により、私たちの生活はより快適になりつつある。

今後の市場発展に大いに期待しつつ、今は掃除機をかけている最中に電話がかかってきたら掃除機を一旦切って電話に出ることを心がけようと思う。


3月21日 ニューヨーク・タイムズ掲載 孫正義コラムより抜粋 


〜了〜